演習問題2の解答

1. 力のつり合い

自由物体図・力の分解

まずはお決まりの自由物体図.今回は作図の都合上直方体以外の物も描写されていますが,本来は直方体だけでOK.

続いて力の分解.

key「力の分解」

力を分解するときは,基本的に垂直抗力の働く方向と,垂直抗力に垂直な方向に分解すると問題を解きやすくなります!

補足 力の水平方向と鉛直方向への分解
補足

もちろん,水平方向と鉛直方向に分解しても問題は解けます.

摩擦力のある問題では,垂直抗力を使って解くことが多いので,垂直抗力は分解しないのが効率的ってだけです.

垂直抗力を水平成分と鉛直成分に分解したとしても,NsinθやNcosθを使ってNを導出する過程を加えれば問題ありません.

方針を立てる

問題文から条件を考えます.

なめらかな床で摩擦がないので,物体が静止する条件:\(mg\) と \(F\) と\(N\)の合力の和=0という形になります.

上の3つの力を斜面方向の力と斜面に垂直な方向の力に分解して考えます.

物体が静止しているので,斜面方向でも斜面垂直方向でも力の釣りあいが成り立っているはずです.

次の段階で式に起こしていきます.

等式を立てる

先ほどの条件;\(mg\) と \(F\) と\(N\)の合力の和=0で,斜面方向,斜面垂直方向それぞれで力のつり合いを考えます.

ここで大事な事.斜面方向と斜面垂直方向それぞれの正負を決めます.

key「正負の決定」

問題文に正負が記述されていないときは,自分で正負を定義します.

どちら向きに正負をとってもいいけど,一度決めたら突き通してください.

今回は,力の分解のスライドに私が定義した正負の向きを入れてあるので参考までにどうぞ.

斜面方向:斜面下向き(下り坂方向)を正とすると,

$$mg\sinθ-F\cosθ+0=0 \tag{1}$$

斜面垂直方向:垂直抗力が発生する方向を正とすると,

$$-mg\cosθ-F\sinθ+N=0 \tag{2}$$

(1)式を解くと,

$$F=mg\tanθ \tag{3}$$

が導出されます.

2. 2物体の運動方程式

自由物体図

今回は物体が2つあるので,2物体それぞれの自由物体図を作ります.

自由物体図(A)

自由物体図(B)

力の分解

今度は力を分解していきます.

大問1の「key」を参考にして,力を分解する方向を決めます.

力の分解(A):斜面方向と斜面垂直方向に分解

力の分解(B):鉛直方向と水平方向に分解

力の分解(B)に関しては,鉛直方向の力しかなかったので,分解しようがありません.

方針を立てる

この問題の条件は,まず物体\(A\)が上昇するのか下降するのかを判断するために.両者の糸に作用する力の大きさを比べます.

向きを判定するだけなので,重力加速度以外に物体にかかる加速度は0として考えます.本来は正の加速度の向きを定めてαと置き,出てきた数値の正負で向きを判断するのが正当な方法.

(2)は,物体\(A\)の加速度を\(α\)として(物体\(B\)でもよい),両者の運動方程式を立てて連立します.

運動方程式には未知数\(T\)と\(α\)を含みますが,連立方程式にして解いて片方消します.

不等式・等式を立てる,解く

(1) 物体\(A\)が糸に作用する力は,

$$m_Ag\sinθ$$

物体\(B\)が糸に作用する力は,

$$m_Bg$$

これに数値を代入して比較してあげると,

$$m_Ag\sinθ=0.90\times\frac{1}{3}=0.30< m_Bg=0.50$$

よって,物体\(B\)が糸に作用する力の方向に動くことになります.言い換えれば,物体\(B\)は下降します.つまり,$$物体Aは上昇する$$

という結果になります.

(2) 物体\(A\)の運動方程式を作ります.

今回は,(1)で物体\(A\)が斜面を上昇するという結果が出てますので,それに合わせて斜面上向きの加速度を正とします.

key「運動方程式の立て方」

運動方程式は,一つの物体にかかっている力の和を表すための式です.

一般化すると,$$物体にかかる加速度\times物体の質量=物体にかかる力の和$$という式になります.

その物体にかかっている力をすべて何らかの文字で置かないと計算できません.

問題文では与えられていなくても発生する力は文字で置いておきます.

物体\(A\)の加速度\(α\),糸の張力を\(T\)として運動方程式を求めます.

物体\(A\)の運動方程式(斜面方向):

$$m_Aα=-mg\sinθ+T\tag{1}$$

$$質量×加速度=重力の分力(向き有)+糸の張力(向き有)$$

斜面垂直方向の運動方程式

今回の運動には関係ありませんが,斜面垂直方向の運動方程式を立てることもできます.斜面に対して上向きを正とすると,

$$0=N-m_Ag\cosθ$$

運動方程式は本来ベクトルで計算されるもので,物体にはたらく\(n\)個の力の和である合力ベクトルが,物体の質量に加速度ベクトルをかけたものに等しいという意味を持っています.

式にすると,

$$m\vec{α}=\sum_{i=1}^{n} \vec{F_i}$$という形になるわけです.

加速度ベクトルや外力ベクトルそれぞれを 斜面方向の力・加速度と,斜面垂直方向の力・加速度 の二つの成分に分けて数値計算したのが今回のやり方.ベクトルを成分に直さない計算方法は,大学に入ると学びます.

本来はベクトル計算だから,向きも含めて代入してあげなければならないんですね!

同様に物体\(B\)についても同様に運動方程式を立てていきます.

この時,物体\(A\)の正負を決める時に物体が運動する方向を正としたので,それに揃えます.

物体\(B\)が運動する鉛直下向きを正として,

物体\(B\)の運動方程式:

$$m_Bα=m_Bg-T\tag{2}$$

$$質量\times加速度(向き有)=重力の分力(向き有)+糸の張力(向き有)$$

今回は物体\(b\)の運動方向に重力が作用しているので,重力の分力=重力という形になっています.

これと物体\(A\)の運動方程式(式1)を組み合わせると,

\begin{eqnarray}
\left\{
\begin{array}{l}
m_Aα=-m_Ag\sinθ+T\\
m_Bα=m_Bg-T
\end{array}
\right.
\end{eqnarray}

ちょうど両辺に\(T\)があるのでこれを消してしまいましょう.

上式+下式:

$$m_Aα+m_Bα=-m_Ag\sinθ+m_Bg$$

$$α=\frac{-m_A\sinθ+m_B}{m_A+m_B}g$$

となります.

あとは数値を代入して,

$$α=1.4m/s^2$$

となります.

これを先ほどの式(1)にでも式(2)にでもいいので代入してあげると,

$$T=4.2[N]$$

となります.

 

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